3104号室

本のレビューや音楽のことや日々思っていることを書くところ。つまり雑記。

『集中力はいらない』森博嗣 著 を読みました

この本のタイトルを見て「集中力はいらない。なんてそんなバカな。仕事だって短時間で終わらせるためには“集中”が必要だし、何かを暗記する時だって“集中”は必要じゃないか。だからむしろ“集中”は生きていくうえで重要な能力のひとつじゃないか。」と怒りながら本を手にしました。というのは嘘で、実際のところは「“集中”って結構大事だよなー。でも“いらない”ってのは何でなんだろうなー。ちょっと気になるなー。」ぐらいの気持ちで読みはじめました。

最初はそんな感じて読み始めたのだけど、結構気づきの多い面白い本だったので紹介したいとおもいます。

本の中では“集中”を認めつつも、それがあまりにも重要視されすぎていないか?という問いかけをしています。

そもそも、僕は、「集中力」を全否定するつもりは毛頭ない。それどころか、集中力は大事だと思っている。ただ、説明が難しいのだが、全面的にそれを押し通すのはいかがか、という問題を提起したい。集中力は、みんなが持っている印象ほど素晴らしいものではない、少しずれているのでは、と気づいてもらいたいのだ。

『集中力はいらない』,まえがき, 集中力を疑う

そもそも「集中しなさい」とは「機械のように働きなさい」ということだったと指摘しています。

今後、機械化がさらに進み、AIが人間に代わって多くの仕事をこなすようになる。仕事がなくなると危惧する声も多いが、仕事なんてなくなれば良いのではないか、と僕は考えている。機械に任せられるなら、任せれば良い。人間は今よりも自由になる。自由になったら、無駄な道草をして楽しめば良い。 これまで、社会が人間に「集中しなさい」と要求したのは、結局は、機械のように働きなさいという意味だったのだから、そろそろその要求自体が意味を失っている時代に差し掛かっているということである。

『集中力はいらない』,第1章 集中しない力, 「集中とは機械のように働く」こと

時代が変わり、機械のように働く必要がなくなったというのはそのとおりですね。

これを読んでて、僕は仕事でたまに出会う困った人たちのことを思い出します。

僕はソフトウェア開発を仕事にしているので、仕事の効率化のための”自動化”がよく話題に上がります。

それこそ機械的な作業はすべて機械にやらせましょうという活動です。

こういう活動をつづけていると、たまに自動化にたいしてあからさまに嫌な顔をする人、拒否反応を示す人と出会うことがあります。

自動化をしようとすると重箱の隅をつつくような問題点(ほとんど起こらないケースで、しかもあまり問題にならないようなもの)を指摘したりして自動化を食い止めようとする人たちです。

いままではこういう人の行動原理はホント謎だったのですが、筆者の言う「集中すること」が仕事だと思っている人にとっては自動化とは「自分の仕事が奪われる」危機的状況だったのでしょう。

うーん。そうやって「集中する」仕事にこだわりらなければならないのって、あまり幸せなことではないよなーと思います。

では「集中する」ことの価値が低下しているなかで、重要になってくるのが、発想です。

発想には集中だけではなく思考の発散も合わさって引き起こされる。ということを著者の経験から以下のように書いています。

事前にそればかり考えていた期間がある、といっても、これは、ずっと一点に集中しているわけではない。最初のうちはたしかに焦点が絞られ、集中している思考といえるものの、問題が解けない(つまりその一本道では前に進めなくなる)ため、別の道はないか、ほかに手はないのか、なにか使えそうなものはないか、同じような傾向がどこかにないか、とだんだん思考が発散していく。そういった「きょろきょろ辺りを見回す」思考を長時間続けたあと、突然、なにも考えない空白の場に置かれたときに、発想は生まれる。格好良い言葉にすれば、「無の境地」のようなものか。あれもこれもと、頭の中が騒がしくなったあと、急に静寂が訪れたとき、ぽっかりと浮かび上がるのである。

『集中はいらない』,第1章 集中しない力, 発想は集中からは生まれない

これは経験ある人も多いのではないでしょうか。

何か煮詰まったときに気分転換でお散歩にでかけたら、ふとしたきっかけで解決策が思いついたりした経験が僕にもあります。

このような「分散思考」を持ったときに発想が生まれやすいというのは、今まで意識してはいなかったけど言われてみれば確かにそうだと納得しました。

この本ではなかなか言語化しにくい「分散思考」の必要性を筆者の経験をもとに書いていて、僕はとても興味深く読むことができました。

研究などをしていた経験のある人は、筆者の意見に合意できる点も沢山あるんじゃないかなぁ。

また「“発想”するとはどうすれば良いのかわからなくて、そういう場面になるといつも困ってしまう。」という人も読んだらコツのようなものが見えてくるのではないかと思います。

気になるかたは、ぜひ読んでみてください。

集中力はいらない (SB新書)

集中力はいらない (SB新書)